診療案内

代表的な疾患

Disease

心房細動

心房細動はもっともポピュラーで診ることの多い不整脈です。
字の示す通り心房が細かく動く(震える)不整脈です。
慢性心房細動と発作性心房細動があります。

慢性心房細動

心拍の間隔が全く不規則ですがそれに慣れていて不整脈として感じません。
検診などで心電図をとった時にたまたま見つかったりします。
検査としてはまず弁膜症や心筋症といった器質的な心疾患がないかは心エコーで確認します。
もともと心疾患がない慢性心房細動の方もたくさんいらっしゃいます。

これまで不整脈に気付かず過ごしてきたわけですから、生活に支障をきたしていないわけです。
自分で気がつかない慢性の心房細動は脈拍も落ち着いていることが多いです。
不整脈自体は放っておいて良いと考えます。
しかし、注意しないといけないことがあります。

脳梗塞を引き起こすことがあるのです。
心房が無秩序に震えた結果、心房内に血栓が形成されそれが脳に飛んで脳梗塞を起こします。
そして血栓を形成しやすい方は糖尿病、高血圧といった生活習慣病のある方です。
そのような方は心房細動の管理よりも生活習慣病の管理が重要です。
よって心房細動で来院された方は心エコーで器質的心疾患がないか調べる。
高血圧や糖尿病など生活習慣病がないかチェックする。となります。

弁膜症などの心疾患がなくても年を重ねるにつれて心臓細動になる方が増えてきます。
心房の筋肉が線維化するために起こる一種の老化現象と言ってもいいでしょう。
心房細動自体は動悸といった自覚症状が無ければそれ自体放置してよいものです。
ただそれに伴う脳梗塞の危険性があることに注意する、そのことに尽きます。
また糖尿病、高血圧など生活習慣病を合併している方は脳梗塞の危険が高いです。
そのような方には生活習慣病の管理と抗凝固療法が必要になります。

抗凝固療法を開始する目安としてCHADS2(チャッズ・ツー) scoreがあります。
心不全、高血圧、年齢75歳以上、糖尿病、脳梗塞の既往、を足します(それぞれ1点で脳梗塞だけ2点)。

スコアー別の年間脳梗塞発症率は
0点 1.9%
1点 2.8%
2点 4.0%
3点 5.9%
4点 8.5%
5点 12.5%
6点 18.2%
と報告されており、2点以上あれば抗凝固療法を開始、1点でも推奨されるというものです。

年齢が75歳未満で高血圧や糖尿病がない0点の方は飲まなくてよいということになりますが年間発症率は0ではないのでケースバイケースで患者さんとお話しして決めます。

抗凝固薬にはワーファリンとDOAC(direct oral anticoagulant:経口抗凝固薬の総称)があります。
現在心房細動による脳梗塞の予防法として確立しているのはこの2つだけです。
現在はワーファリンより出血の副作用が少ないDOACがありますから抗凝固療法の敷居が低くなりました。

ワーファリンは1950年代から医薬品としての歴史があり、効果としては確立されています。
値段も安くこれまで経口抗凝固薬として唯一のものでしたが煩わしさを伴います。
外来時に毎回効き目を採血で確認する必要があり、人によっては効果が不安定で効いていなかったり効きすぎていたりします。
また納豆を食べると効果が減弱してしまいます。
結構面倒です。
それに替わる薬として数年前からDOACが登場しました。
現在プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナの4種類が発売されています。
ワーファリンよりも内服後短時間で効き始め、中止すると翌日には効果がなくなります。
毎回採血して効果を確認する必要がありません。納豆も食べられます。
4種類の薬はいずれもワーファリンと同等の効果があり、副作用(脳出血など)もワーファリンより少ないというデータがあります。

唯一と言っていい問題点は値段です。
ワーファリンは大体の方が3mg程度を内服しますがその支払額が3割負担の方で月に270円、1割負担で90円、DOACはどれも似たような額で最新のリクシアナは通常量で3割負担の方で4950円、1割負担で1650円となります。
1割負担の方ならDOACにしようかとなりますが3割負担の方だとうーん、となってしまう額です。
これまでワーファリンを服用していて効果が安定している方はそのままで全く構いませんが、新規に抗凝固療法が必要な方にはお値段を許容できるのであればDOACをお勧めしています。

発作性心房細動

発作性心房細動とは48時間以内に自然停止する心房細動です。
慢性の心房細動と比較して脈が速いことが多く動悸といった自覚症状も強いです。
今日の朝から突然動悸が始まったと開始時間をはっきりと訴えることが多く、時に胸痛と表現される方もいます。
不整脈の中では頻度が高く結構やっかいです。

この発作性心房細動の方が来られた場合、薬を使って正常の心拍に戻すことを考えます。
以前は注射薬で元に戻していましたが、最近は内服薬を使用します。
注射の方が早く効果が表れますが、所詮48時間以内に戻る不整脈です。
注射はできれば避けたい(自分がそうなってもできれば注射は嫌です)と思いますから、最近は内服薬を使います。

サンリズムという抗不整脈薬を2C内服して頂き(頻脈が強ければワソラン、或いはメインテートといった脈を遅くする薬を併用します)、命にかかわるような不整脈ではないのでいったん帰宅して頂きます。
翌日来院して頂くとほとんどのケースで正常に戻っています。
戻った後は慢性心房細動と同様に高血圧の有無を調べ、心エコーをして心疾患の有無をチェックし、採血して糖尿病をはじめとした生活習慣病がないか調べ、問題があれば治療します。
それらが問題なければ、サンリズム頓服用を数回分持たせて今後の発作性心房細動の頻度をフォローします。

発作が年に1~2回または月に1~2回程度の方は頓服でフォローとなりますが、週に何回か起こるようならサンリズムもしくはそれに準ずる薬を常用して頂くことになります。
その時には慢性心房細動と同様、CHADS2 scoreにより抗凝固療法も必要になってきます。
薬を飲みたくない、または薬が効きにくくなったという方にはカテーテルアブレーションという治療をお勧めすることもあります。
心房細動に対するアブレーションは他の不整脈に対するアブレーションと比較すると再発の可能性が高く(30%程度)、2回目のアブレーションを必要とすることも多いです。
アブレーション後再発がなければ抗凝固療法は中止可能でこれはアブレーションの大きなメリットといえます。